町内会の会計を引き継ぐ日、前任者から紙袋をひとつ渡されることがあります。中身は通帳と印鑑、手提げ金庫、手書きのノート、輪ゴムで留めた領収書の束。何から手をつけるか迷っている会計係の人に向けて、最初の1か月でやることを順にまとめました。

この記事の結論

先に答えを書きます。引き継ぎの当日は、受け取る物をそろえ、前任者の目の前で帳簿と通帳・現金の残高を合わせてください。通帳の名義変更や帳簿のつけ方を決めるのは、そのあと1か月以内で間に合います。

当日と1か月以内に分けると、流れは下の図のとおりです。

町内会の会計の引き継ぎの流れ。当日に受け取る物をそろえる、残高を合わせる、前任者に聞いておくの3つを行い、1か月以内に通帳の名義と届出印の変更、帳簿のつけ方を決める

引き継ぎの日に前任者から受け取るもの

紙袋の中身だけが引き継ぐ物とは限りません。キャッシュカードやネットバンキングで支払いをしている町内会なら、暗証番号やログインIDも引き継ぎの対象です。形が残らないぶん、渡し忘れが起きやすくなります。

下の表は、前任者と一緒に上から順に確かめる確認表です。印を付け終えたら二人で署名し、コピーを1部ずつ持っておけば、そのまま受領書(受け取ったことを示す書類)になります。

受け取る物その場で確認すること確認
通帳(すべての口座)記帳して最新の残高になっているか。口座の数と名義□
キャッシュカード・暗証番号、ネットバンキングのIDカードの枚数、暗証番号とIDの受け渡し方法、パスワードを変える日□
届出印どの口座に届けた印か□
現金・手提げ金庫二人で数えた金額□
現金出納帳・預金出納帳最後の行の残高と、記入が止まっている日付□
領収書・請求書の綴りいつの分まで綴じてあるか□
前年度の決算報告書・予算書次期繰越金(翌年度に持ち越すお金)の額と、総会で承認されたか□
会費の納入名簿未納の世帯と、その理由□
年間の支払い予定何を、いつ、いくら払うか□
規約・会計のルール、補助金の書類支出に誰の承認が要るか。補助金の報告期限□
引き継ぎ日  年  月  日
前任者 署名
後任者 署名

足りない物は、いつまでに渡してもらうかをその場で決め、余白に書き込みます。

その場で帳簿と通帳・現金の残高を合わせる

物がそろったら、前任者が帰る前に、帳簿の残高と通帳・現金が一致するかを確かめてください。後回しにすると、差額が見つかったときに、いつからずれていたのか分からなくなります。

前年度の決算報告書が総会で承認済みかを見る

最初に開いてほしいのが、前年度の決算報告書です。総会で承認を受けていれば、そこに書かれた次期繰越金が、受け取るお金の出発点。この金額までが前任者の年度、ここから先が自分の年度という責任の境目になります。

承認がまだ、または分からないときは、確認表の余白にそう書き添えて、承認の予定を会長に聞いておいてください。決算報告書のどの欄に何が書いてあるかは、町内会の決算報告書の書き方(見本つき)で説明しています。

通帳は記帳してから確かめる

ここで多いのが、記帳していない通帳で残高を確かめてしまうケースです。印字された残高が帳簿と合っていても、その後に電気代や保険料が引き落とされていれば、実際の残高は違います。

当日の朝に前任者に記帳してきてもらうか、二人でATMに寄ってから確かめます。ネットバンキングなら、その場で画面の残高を一緒に見れば足ります。

現金は二人で数えて、金額を書いて署名する

手提げ金庫の現金は、前任者と一緒に数えてください。お札と硬貨を種類ごとに並べると、数え間違いが減ります。数えた金額を確認表に書き込んだら、二人の署名で締めくくりです。

合わないときは、原因をその場で探し切らない

帳簿と実際のお金が合わないと、自分が何かしたわけでもないのに焦るものです。でも、その場で原因を突き止める必要はありません。「帳簿の残高」「実際の残高」「差額」の三つを書き残し、前任者と二人で署名しておけば十分です。

そのうえで、会長と会計監査の人に伝えます。受け取った時点の金額が記録されていれば、あとで何か見つかっても、自分の年度と切り分けて説明できます。

前任者に聞いておくこと(年間の支払いと、この町内会のやり方)

帳簿を見ただけでは分からないのが、その町内会ならではの決まりごとです。前任者がいるうちに、次のことを聞いてメモしておきます。

  • 毎年決まって出ていくお金と、その時期(たとえば連合会への会費、街灯の電気代、行事の保険料など)
  • 会費を集める時期と、班長さんから受け取る手順
  • 立替払いで精算が済んでいないレシートや、まだ払っていない請求書が残っていないか
  • 領収書が出ない支出(お祝い金など)をどう記録していたか
  • あとで質問できる連絡先

立替や未払いは、帳簿にまだ載っていないお金。前任者の財布に残ったレシートや置きっぱなしの請求書があとから出てくると、どちらの年度で払うかで話がこじれます。「ほかに払っていない物はありませんか」と一言聞いておけば防げます。

1か月以内に済ませる手続き(通帳の名義・届出印の変更)

町内会の口座は「〇〇町内会 会長 〇〇〇〇」のように、団体名と代表者名で作られていることがよくあります。代表者や届出印が替われば、銀行での変更手続きが要ります。

必要な物は銀行によって違います。例としては、代表者の交代が分かる総会の議事録、新代表者の本人確認書類、届出印、通帳などです。出かける前に、取引先の銀行の窓口かホームページで確認してください。

つまずきやすいのは、通帳が前任者の個人名義のままになっている場合です。たとえば、名義変更のために前任者にも銀行まで一緒に来てもらう必要があるのに、前任者が仕事で平日に動けないという場合。窓口が開いている平日に二人の都合が合わず、手続きに1か月以上かかることもあります。

名義が個人のままなら、引き継ぎの当日に、前任者と銀行へ行く日を決めてしまうのが確実です。

帳簿のつけ方を最初の1か月で決める

前任者のExcelやノートを続けるかどうかは、最初の支払いを記録する前に決めておきます。途中で形を変えると、年度末に二つの帳簿を足し合わせることになります。

目安は、自分が迷わず書けるか、次の人が説明なしで読めるかの二つ。数式が壊れたExcelや略語だらけのノートなら、この機会に作り直しても構いません。年度末の監査で何を見られるかは、会計監査で見られることと確認10項目にまとめています。先に知っておくと、帳簿の形も決めやすくなります。

町内会の会計の引き継ぎでよくある質問

前任者と連絡がつかないときは?

引っ越しなどで連絡がつかないときは、会長に相談し、前年度の役員や会計監査の人に事情を聞いてください。受け取れなかった物は確認表に書き分け、会長にも見てもらいます。

引き継ぐ前からの使途不明金は、誰の責任になる?

責任の所在は、町内会の規約や総会の判断によって変わるため、ここでは言い切れません。後任者としてできるのは、受け取った時点の金額を記録しておくことです。

差額が分かったら、会長と会計監査の人に共有し、総会で扱ってもらうよう相談します。一人で抱え込んだり、自分のお金で埋め合わせたりはしないでください。扱い方は団体の規約も確認してください。

まとめ

引き継ぎの当日は、確認表で受け取る物をそろえ、記帳した通帳と現金で残高を合わせて二人で署名する。前任者には年間の支払いと、精算の済んでいない立替や未払いを聞いておく。名義変更と帳簿のつけ方は、1か月以内に済ませれば間に合います。

みんなの会計

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